インビザラインのメリット・デメリットは?ワイヤー矯正との違いは?
生活する中で多くの方が気にする歯並び。
かつてはゴツゴツとした金具やワイヤーを取り付ける「ワイヤー矯正」でないと歯列矯正ができませんでしたが、昨今はマウスピース型の矯正装置を使った「インビザライン」が普及し、より手軽に矯正ができるようになりました。
そんなインビザラインとは一体何なのか?そしてそのメリット・デメリット、気を付けなければならないことについて今回はご紹介したいと思います。
そもそもインビザラインとは?
インビザラインとは、透明なプラスチック製マウスピースを用いた歯科矯正方法の1つのことです。マウスピースによって歯を少しずつ動かしていき、数週間ごとにマウスピースを交換することで歯並びをキレイに整えていきます。
従来のワイヤー矯正と違って、周りから矯正していることが目立ちにくいことや、取り外しが可能なため、日常生活で違和感が少ないことが特徴です。
このシステムはアメリカのアライン・テクノロジー社によって開発され、現在では世界100ヶ国以上で広く利用され、1,500万人が治療を受けています。
※インビザライン矯正とインビザラインGoの合計(2023年3月時点)
インビザラインのメリット
マウスピースを用いて行うインビザラインですが、様々なメリットがあります。
こちらではそのメリットをご紹介いたします。
矯正していることが目立たない
インビザライン矯正の大きな魅力として、矯正していることが周りから目立ちにくいことが挙げられます。
インビザラインの場合は透明なマウスピースを使用して治療を行うため、近くで見ても矯正装置がほとんど目立ちません
ただ結婚式や記念撮影など、あまり矯正を目立たせたくない場合は、短時間であれば外すことも可能です。
過去にワイヤー矯正を経験した方や、ワイヤーを歯に付けることに抵抗がある方、接客業などで人前に立ち、コミュニケーションを頻繁にとる方におすすめの矯正治療です。
ワイヤーがないため違和感が少ない
インビザライン矯正は歯全体を段階的に動かして整えていく治療であるため、痛みが少ないというのもメリットの1つです。
従来のブラケットやワイヤーによる矯正治療は、強い力で歯を移動させるため、痛みや締め付け感を強く感じることがあります。
また、金具を装着していることで粘膜を傷つけ、口内炎になりやすい傾向にあります。
マウスピースも歯のみを覆う仕様なので、インビザラインは今までの矯正治療で起こりうるトラブルが少ない治療方法なのです。
取り外し可能
マウスピースは食事や歯磨き時を含めて、患者さんの好きなタイミングで外すことが可能です。
また、定期的に新しいものと取り換えるため、ワイヤー矯正と比較してお口の環境を清潔に保つことができます。そのため、矯正期間中に虫歯や歯周病などの口内トラブルが発生する可能性が低いです。
また、ワイヤー矯正はスポーツや食事面など日常生活において制限がありますが、インビザライン矯正は治療中の制限はほとんどありません。
患者さんの生活に大きな影響を与えずに矯正できるのがインビザラインの強みです。
金属アレルギーの方でも安心
インビザラインで使用するマウスピースは医療用のプラスチックでできているため、金属アレルギーの患者さんでも安心して治療が受けられます。
ワイヤー矯正を行う場合、ブラケットやワイヤーを歯に接着させる必要があるため、どうしても口内に金属の装置を入れなければなりません。そのため、金属アレルギーの方に施術するのが難しい傾向にありました。
一方で、インビザラインは金属の装置を使用しません。そして、体に無害な医療用プラスチックを使用しているため、金属アレルギーをはじめ、患者さんの身体への悪影響は一切ありませんので、安心して矯正治療を受けられます。
食事・行動制限がない
ワイヤー矯正の最中だと、生活するうえで以下のような食事や行動に気を付けなければいけません。
- 身体が触れ合うような激しいスポーツ
- 粘り気の強い食事 ex.アメやお餅など
- かたい食べ物 ex.お煎餅や分厚いステーキなど
- 装置に着色してしまいそうな食べ物 ex.カレーやコーヒーなど
- 通常より食べカスや歯石が残りやすいため、入念にケアをする
一方でインビザラインの場合、マウスピースを取り外せるため、上記のような制限がありません。また万が一、マウスピースに色がついてしまった場合も、マウスピースは通常10日〜2週間で新しいものと交換するため、あまり心配はいりません。
そしてワイヤー矯正の場合、激しいスポーツは口内を傷つける恐れがあるため注意が必要ですが、インビザラインはプラスチック製で危険が少ないため、装着しながらスポーツできます。
治療計画が分かりやすい
インビザラインは初診の際に「iTero」と呼ばれるスキャナーで歯形のデータを収集するため、治療過程から最終的な仕上がりまでが分かりやすいというメリットがあります。
従来の矯正では、治療中に歯がどのように動くのか、最終的にどのような歯並びになるのかといった流れは歯科医師の口頭での説明や模型を使った説明が限界でした。
対してインビザラインの場合、専用のソフトによって、治療中の歯の動きや最終イメージを3Dでシミュレーションしたもので確認することができます。これによって治療を始める前に、治療後にどのような見た目になるのかをイメージできますし、治療にかかる期間もほぼ正確に知ることが可能です。
また、治療期間以外にも以下のような内容が治療前には確認できます。もしも治療前に以下の内容で納得ができなければ、治療を見送るというのも問題ありません。
- 費用の総額
- 矯正完了までに必要なマウスピースの枚数
通院が少なくて済む
ワイヤー矯正の場合、定期的に歯科医院でワイヤーの調整や交換を行ったり、通常よりも食べカスや歯石が残りやすいため、掃除を行う必要があります。
しかし、インビザラインでは、事前に治療計画に沿ってマウスピースが作成され、患者さんご自身で段階ごとに交換していきます。矯正治療の経過に伴って、頻繁に歯科医院へ通わなくて結構です。
なお個人差はありますが、インビザラインの場合、通院頻度は一般的に2〜3ヶ月程度です。
インビザラインのデメリット
インビザラインにはメリットがある反面、デメリットと考えられる点もございます。
こちらではそのデメリットについて紹介いたします。
マウスピースの管理をしなければいけない
前述のように、マウスピースは基本自己管理となります。食事・歯磨きのたびにマウスピースを取り外す必要があり、清潔に保ちつつ、無くさないように管理しなければいけません。
また、段階にしたがってマウスピースを交換していくため、定期的な通院も必要です。この一連の流れを手間だと感じる方もいらっしゃるでしょう。
毎日の装着時間が長い
インビザラインは基本的にマウスピースで行う歯列矯正です。食事の際や歯磨きをする時など、患者さんご自身の好きなタイミングでつけたり外したりができます。
しかし、インビザラインは1日21時間以上の装着を推奨しています。装着時間が守られていない場合、十分な矯正効果が得られず、最終的な歯並びの仕上がりに支障をきたすことがあります。
「今日は少し違和感があるから…」や「ちょっと友達と会うタイミングだけ」と言って外す使い方はできません。
ワイヤー矯正の場合はそもそも「自ら外す」という概念がありませんが、インビザラインはマウスピースを自由に外せてしまいます。そのため、自分自身で装着時間を管理し、装着し続けることが重要です。
医師の技術・経験が求められる
インビザラインは初診の際に歯形をスキャンし、そのデータをもとに3Dシミュレーションで歯の動きを予測したり、治療計画を作成したりします。
ただ、実際の治療現場では患者さんからの要望・今現在の歯並びなどに対して臨機応変に治療計画を調整する場合があります。
この調整によって最終的な矯正の出来が変わってきます。そのためインビザラインを検討している方は、知識や経験の豊富な歯科医師のいる医院で治療を受けることをお勧めします。
歯周病・インプラントの場合、矯正できない可能性がある
インプラントは歯茎の骨にインプラントの土台を埋め込んでいるため、通常の歯のように矯正装置で動かすことができません。
ただし、矯正で動かす歯とインプラントの歯が別で、矯正の邪魔にならなけないようであれば、インプラントが入っていても矯正できるケースもあります。もしインプラントとインビザラインのどちらも検討しているという方は、先に歯列矯正を進めることをオススメします。
また歯周病がある方の場合、先に歯周病を治さない限り、インビザラインでの矯正は難しいでしょう。
歯周病を治さないまま、マウスピースを装着していると、歯周病が悪化する恐れがあります。歯周病が進行して、歯がグラグラするなどと不安定になると、矯正の負荷に耐えられず歯が抜けてしまうという最悪のケースがあります。
矯正を行う前にキチンと歯周病治療を行い、歯が歯周病で弱り、矯正によって抜けてしまうことを未然に防ぎましょう。
歯並び次第ではできないこともある
インビザラインはすべての患者さんに適用できる矯正ではありません。適さない骨格や歯並びの場合は、インビザラインでは矯正することができません。
そのインビザラインで矯正できない歯並びの代表例は、以下の4つです。
- ズレの大きな出っ歯
- ズレの大きな受け口
- 埋没歯(歯茎の中に埋まっている歯)があり、マウスピースが歯に当たらないような歯並び
- 抜歯が必要で前歯が内側に倒れ込むようなリスクのある歯並び
- 叢生(歯が前後に重なっている歯並び)が激しい場合
上記の歯並びは、インビザラインが不向きだと考えられています。
特に出っ歯・受け口については、根本の原因となる骨格のズレから改善する必要があるため、矯正治療より前に外科手術が必要となります。そのような場合はインビザライン単体での治療は難しいと考えられます。
反対にインビザラインでの治療が適した歯並びを以下に記載いたします。ご参考ください。
- 抜歯が必要ない方
- 抜歯が必要でも、歯の移動距離が少ない方
治療が受けられる歯科医院が限られる
インビザラインは今となっては認知度も増え、普及した矯正方法ではありますが、比較的新しい技術を使用した治療法です。そのため、歯医者だから、矯正歯科だからと言ってどこの歯科医院でも受けられるわけではありません。
通い始める前に、前もってその歯科医院でインビザラインができるのか調べたり、相談をする必要があります。
インビザラインをする上での注意点
ここまでインビザラインのメリット・デメリットについて紹介して参りましたが、こちらではインビザラインを行う上での注意点について紹介いたします。今後インビザラインを考えている方は是非参考にしてみてください。
徹底した自己管理が必要
インビザラインでの矯正効果を確実に出すためには、1日に21時間以上の装着が必要です。そのため、お食事中や歯磨き中以外は基本的に装着していただく必要があります。装着時間が短い場合、歯が予定通りに動かなかったり、動いた歯が元に戻ってしまったりなどして、再度マウスピースを製作しなければいけなくなるケースがあるので注意しましょう。
マウスピースを付けたままの飲食は避ける
飲食時にはマウスピースを外すことができます。ただ取り外しの面倒くささから、飲み物はそのまま飲んでしまわれる方がいらっしゃいます。糖分が入っているものは虫歯の原因になりますし、糖分がなくてもお茶やコーヒーなど色の付いているものは着色の原因となります。
インビザラインでの治療を受ける場合、面倒かもしれませんが、水以外の飲食の際は毎回外すようにしましょう。
マウスピースの交換のタイミングを守る
マウスピースの交換は通常10日〜2週間毎くらいです。交換のタイミングは事前の治療計画や担当医から指示がありますので、スケジュール帳やカレンダーに記入するなどして、きちんと守っていただく必要があります。
紛失に気を付ける
マウスピースを外す際、置く場所がなく、ティッシュなどに包んでしまう方もいらっしゃいます。しかし、包んだことを忘れてうっかり捨ててしまう場合があります。
なくしてしまった場合、もう一度マウスピースを製作しなければならなくなり、費用はもちろん、治療期間が延びますので、外しておく際にはケースに保管するなど紛失には十分に気を付けましょう。
虫歯・歯周病などに気を付ける
前述のように、インビザラインはワイヤー矯正に比べると虫歯のリスクは低い治療方法です。
しかし、日頃の口腔ケアを怠り、虫歯ができてしまうと、虫歯治療によって以前と歯の形が変わってしまうため、マウスピースを再び作らなければいけない恐れもあります。
またデメリットについて紹介した際にもあるように、歯周病を発症したまま、マウスピースをしていると悪化して、最終的には歯が抜けてしまう恐れがあります。
そのため、虫歯・歯周病予防には細心の注意を払い、日頃から歯磨きなどのケアを怠らずに行いましょう。
まとめ
このように、インビザラインは従来のワイヤー矯正と比較して取り外し可能など優れている点がある反面、適応できる歯並びがあったり、徹底した自己管理が必要になったりと、気を付けなければいけない点も持ち合わせています。
歯列矯正を始めるうえで、最も大切なことは、一度歯科医院に足を運び、相談することです。
今回紹介したメリットやデメリットやご自身の歯並び・骨格を踏まえ、1人で考えることも大切ですが、歯科医師と相談し、具体的な治療計画の練り上げ、ご自身の納得のいくかたちで歯列矯正が始められることが重要です。ぜひ一度足を運び、歯科医師と相談してみてください。